お掃除と魔術書

4/4

19人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
 あの本は、精霊を召喚する魔術書らしかった。 「まったく・・・・・・低級な精霊だったからまだよかったが、危険な物もあるんだぞ」  はあ、と溜め息をつきながらサヴィは私に軟膏を塗る。  先ほどの突風で、あちこちに切り傷が出来たのだ。  どれもごく浅い傷だからよかったけど・・・・・・。 「うう、ごめんなさい」  せっかく片付けた部屋はまた散らかってしまったし、カーテンにも被害が出たし、とほほである。  しょんぼりと肩を落としていると、軟膏の蓋を閉めながらサヴィが苦笑した。 「いや、部屋はいい。それより、すまん。一人にした俺も悪かった」 「サヴィ・・・・・・」  サヴィ、良い奴!  余計に申し訳なくなって、私はもう涙目だ。 「だ、だから泣くな! 部屋はまた片付ければいい。そうだろう?」 「うん・・・・・・そうだね」  鼻をすすり、私はうろたえるサヴィに笑ってみせた。  明らかにほっとするサヴィが可愛いくて、こんな時なのにドキッとしてしまう。  ・・・・・・いやいや、無いから。   「え、えーと。じゃあ、また頑張ろうか」 「ああ、そうだな」  私はわざと勢いよく立ち上がると、さりげなくサヴィから顔を背けた。  サヴィが無駄に整った顔しているのが悪いんだよね、うん。    再び掃除を始めても、なかなか心臓がゆっくり動いてくれなくて少し困ったけど、今度は何の問題も無く部屋は綺麗になったのだった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加