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あの本は、精霊を召喚する魔術書らしかった。
「まったく・・・・・・低級な精霊だったからまだよかったが、危険な物もあるんだぞ」
はあ、と溜め息をつきながらサヴィは私に軟膏を塗る。
先ほどの突風で、あちこちに切り傷が出来たのだ。
どれもごく浅い傷だからよかったけど・・・・・・。
「うう、ごめんなさい」
せっかく片付けた部屋はまた散らかってしまったし、カーテンにも被害が出たし、とほほである。
しょんぼりと肩を落としていると、軟膏の蓋を閉めながらサヴィが苦笑した。
「いや、部屋はいい。それより、すまん。一人にした俺も悪かった」
「サヴィ・・・・・・」
サヴィ、良い奴!
余計に申し訳なくなって、私はもう涙目だ。
「だ、だから泣くな! 部屋はまた片付ければいい。そうだろう?」
「うん・・・・・・そうだね」
鼻をすすり、私はうろたえるサヴィに笑ってみせた。
明らかにほっとするサヴィが可愛いくて、こんな時なのにドキッとしてしまう。
・・・・・・いやいや、無いから。
「え、えーと。じゃあ、また頑張ろうか」
「ああ、そうだな」
私はわざと勢いよく立ち上がると、さりげなくサヴィから顔を背けた。
サヴィが無駄に整った顔しているのが悪いんだよね、うん。
再び掃除を始めても、なかなか心臓がゆっくり動いてくれなくて少し困ったけど、今度は何の問題も無く部屋は綺麗になったのだった。
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