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「火トカゲ。火の下級精霊だ」
「この子も精霊なんだ」
火トカゲはサヴィのてのひらでじっとしている。
赤色の鱗とルビーのような目を除けば、普通のトカゲに見える。
「触ってもいいかな?」
好奇心でそう尋ねると、サヴィは戸惑ったように目を瞬いた。
「触りたいのか? 変わっているな」
「そう? 精霊を触るのは駄目?」
「いや・・・・・・術者が一緒なら、つまり俺が一緒なら大丈夫だ」
サヴィが火トカゲをこちらに差し出す。
トカゲにしか見えないけど、精霊だと思うとドキドキした。
そっと、背中を撫でてみる。
「熱くないんだね。ひんやりしてる。それに、すべすべ」
火トカゲはおとなしく撫でられるまま、時折気持ちよさそうに目を細めている。
「ユカは神秘を怖がらないんだな」
サヴィがなぜか嬉しそうに言った。
「神秘を怖がる者は多い。魔術にゆかりのない者ほどそうだ。だから、なかなか使用人を雇えない」
「そうなんだ・・・・・・」
「扱い方を間違えなければ、素晴らしい力なんだがな」
つぶやくサヴィはどことなく寂しげだ。
「サヴィは魔術が好きなの?」
「少し違う。・・・・・・人の役に立つ魔術が好きだ」
目を逸らし、恥ずかしそうにささやいたサヴィは、またとても優しい微笑みを浮かべていた。
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