再会と契約

2/4
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
 あれから一週間が経った。  今日は大学はお休み。  私は家の家事を手伝いながらも、ぼんやりしていた。 「由香」 「・・・・・・」 「由香!」 「え? なに?」  顔を上げると、母が呆れたようにこちらを見ていた。 「なに、じゃないわよ。さっきから同じところを拭いてるわよ」 「あ・・・・・・」 「何があったのかは知らないけどね、いい加減しゃんとしなさい」 「・・・・・・はい」  しゅん、と肩を落とすと、母は溜め息をつく。 「ここはもういいから、お茶をいれてきてくれない?」 「うん、わかった」  私は素直にうなずくと、台所へと向かった。  歩きながら溜め息が出る。  ・・・・・・今ごろ、サヴィはどうしてるかなあ。  思い浮かぶのは、あの紫色の髪をした魔法使いのことばかり。  翠の瞳を思いだすと、胸が締め付けられるように痛い。 「・・・・・・会いたいなあ」  通り雨のような邂逅だったけど、生まれた想いは今も胸に咲き続けている。  ーーでも、もう会えない。  浮かんだ涙を乱暴に振り払い、私は台所に立った。  お茶を飲めば、少しは気が紛れるかもしれない。 「よし、飛びっきり美味しいお茶をいれよう」  なけなしの元気を振り絞り、そう宣言した時だ。  足元が、光った。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!