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あれから一週間が経った。
今日は大学はお休み。
私は家の家事を手伝いながらも、ぼんやりしていた。
「由香」
「・・・・・・」
「由香!」
「え? なに?」
顔を上げると、母が呆れたようにこちらを見ていた。
「なに、じゃないわよ。さっきから同じところを拭いてるわよ」
「あ・・・・・・」
「何があったのかは知らないけどね、いい加減しゃんとしなさい」
「・・・・・・はい」
しゅん、と肩を落とすと、母は溜め息をつく。
「ここはもういいから、お茶をいれてきてくれない?」
「うん、わかった」
私は素直にうなずくと、台所へと向かった。
歩きながら溜め息が出る。
・・・・・・今ごろ、サヴィはどうしてるかなあ。
思い浮かぶのは、あの紫色の髪をした魔法使いのことばかり。
翠の瞳を思いだすと、胸が締め付けられるように痛い。
「・・・・・・会いたいなあ」
通り雨のような邂逅だったけど、生まれた想いは今も胸に咲き続けている。
ーーでも、もう会えない。
浮かんだ涙を乱暴に振り払い、私は台所に立った。
お茶を飲めば、少しは気が紛れるかもしれない。
「よし、飛びっきり美味しいお茶をいれよう」
なけなしの元気を振り絞り、そう宣言した時だ。
足元が、光った。
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