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「それで?」
「ん?」
お茶を啜りつつ、話を再開する。
「妖精がどうとか」
「ああ」
ごくり。
一口飲んで、男は話し出す。
「家事をさせようと思ってな。手伝いの妖精を呼ぶつもりだった」
「お掃除妖精! 本で読んだことあるよ」
「そうか。知っているなら話が早い。ーー長いこと家のことを任せていた弟子が巣立ってな」
「ああ、それで妖精を?」
「そうだ。だが、失敗した。とっておいた魔術用のインクが古すぎたか、それとも触媒の量を節約したのがよくなかったか・・・・・・。とにかく失敗して、それで」
「私が呼ばれた?」
「そうだ。・・・・・・すまん」
男はカップをテーブルに置き、深く頭を下げた。
「んーー。あのさ、私、帰れるの?」
「条件を満たせば、おそらく」
「条件?」
「・・・・・・家事を行うこと。時間はおよそ半日」
私はお茶を啜り、はふうと溜め息。
男はますます頭を下げて、ほとんどテーブルにくっつくほどである。
「・・・・・・わかった。家事をすれば帰れるのね?」
「してくれるのか?」
ちらりとこちらをうかがいながら、男が尋ねる。
この人、髪が邪魔して顔がよく見えなかったけど、意外と若い。
それに、綺麗な顔をしてる。
翠の瞳が宝石みたい。
「しないと帰れないんでしょ? でも、その前に」
「ん?」
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