おじやと魔法使い

5/6
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「それで?」 「ん?」  お茶を啜りつつ、話を再開する。 「妖精がどうとか」 「ああ」  ごくり。  一口飲んで、男は話し出す。 「家事をさせようと思ってな。手伝いの妖精を呼ぶつもりだった」 「お掃除妖精! 本で読んだことあるよ」 「そうか。知っているなら話が早い。ーー長いこと家のことを任せていた弟子が巣立ってな」 「ああ、それで妖精を?」 「そうだ。だが、失敗した。とっておいた魔術用のインクが古すぎたか、それとも触媒の量を節約したのがよくなかったか・・・・・・。とにかく失敗して、それで」 「私が呼ばれた?」 「そうだ。・・・・・・すまん」  男はカップをテーブルに置き、深く頭を下げた。 「んーー。あのさ、私、帰れるの?」 「条件を満たせば、おそらく」 「条件?」 「・・・・・・家事を行うこと。時間はおよそ半日」  私はお茶を啜り、はふうと溜め息。  男はますます頭を下げて、ほとんどテーブルにくっつくほどである。 「・・・・・・わかった。家事をすれば帰れるのね?」 「してくれるのか?」  ちらりとこちらをうかがいながら、男が尋ねる。  この人、髪が邪魔して顔がよく見えなかったけど、意外と若い。  それに、綺麗な顔をしてる。  翠の瞳が宝石みたい。 「しないと帰れないんでしょ? でも、その前に」 「ん?」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!