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赤茶色の古ぼけた本は、他の物と違って絵本のようにうすかった。
何の気なしに手に取り、表紙を見る。
金色で書かれた文字は読めないけど、可愛い女の子らしき絵が描かれていて、やっぱり絵本のように思えた。
「ちょっとだけ、失礼します」
異世界の絵本がどんな物なのか気になって、そっと開いてみる。
だけど、それは絵本では無くて、想像とは違い真っ白なページに、漫画で見たような魔方陣が描かれていた。
あ、ヤバイかも。
顔を引き攣らせた私の耳に、幼い少女の笑い声が響いた。
ーーきゃははは!
そして突然の突風。
目を開けていられずぎゅっとまぶたを閉じて、身体を縮こませる。
笑い声と突風は数分間続いてから唐突に消えた。
「ユカ!」
血相を変えたサヴィが駆け込んできたのは、そのすぐ後だった。
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