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「えっ? どうしたの? 痛かった?」
そんなに強く撫でたわけではないのに、聞いたことのないコタロウの鳴き声に私は焦った。潤んだ大きな瞳が私をじっと見つめる。そして、ゴロゴロと喉を鳴らしながら、顎をベランダの床につけてしまった。その表情にはさっきまで見せていた元気はない。
「コタ、どうしたの? お部屋に入ろうか」
そう言ってコタロウを抱き上げたとき、コタロウが再びにゃっと濁った声で鳴いた。はっとコタロウのことを見ると、いつもは真っ白なコタロウの前足が鮮血に濡れている。
何これ……、何があったの……!?
目に映った光景に言葉が出ずに呆然と見ていると、まるで助けを求めるようにコタロウは再びゴロゴロと喉を鳴らした。その声に私は我に返る。
「びょ、病院……! あと、タオル!」
私はコタロウをできるだけ動かさないにように部屋の中の窓のそばに横たわらせる。震えそうになる身体を必死に立たせて、タオルを取りに急いで洗面所に駆け込んだ。
早く病院に連れて行かなければという焦りの気持ちでいっぱいで、床に散乱したタオルを拾う余裕もないまま、私はコタロウを連れて家を出た。
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