1*ネコが繋いでくれたもの

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   私は他人の目を気にする余裕もなく、家から程近い“つつみ動物病院”に駆け込んだ。一目散に受付に向かうと、私の様子に動じることなく、スタッフが窓口から顔を出してくる。 「どうされました?」 「あのすみません、コタ……、あっ、うちのネコがケガして血が……、すぐに診てもらえませんか!?」 「落ち着かれてくださいね。ちょっとネコちゃんの様子を見せてもらいますね」 「あっ、はい!」  スタッフが受付の部屋から出てきて、私は促されるままコタロウが入っているネコ用のキャリーバッグを差し出す。  少しは冷静さが残っていたようで、私はコタロウの負担にならないようにキャリーバッグを使ってここまで連れてきた。逃げ出さないためのリードももちろん着けている。たったの5分という道すがら、私は何度もバッグの窓からコタロウの様子を窺いながら、ここまで辿りついた。  スタッフが「失礼しますね」とバッグを開き、中にいるコタロウを覗き込む。すると、中にいたコタロウは怯えるように身体を震わせ、ふーっと言いながら毛を立たせた。 「あっ、コタっ……」 「知らない人と場所が現れて驚かせたかしら。ネコちゃんのお名前は?」 「コタロウ、です」 「コタロウくん、大丈夫だからね」  スタッフが優しく声をかけながらコタロウに触れようとするけど、痛みに加えて警戒心と恐怖が加わったコタロウはゴロゴロと喉を鳴らして唸り続ける。それにも動じずスタッフはコタロウの足に触れ、私が慌てて巻いてきたタオルをゆっくり外し、真剣な表情で状況を確認している。 「あら、すっぱり切れてるわね……」 「西岡(にしおか)さん、どうしました?」 「虎谷(とらたに)先生、ちょうどいいところに。ネコのコタロウくんがケガをしたと連れてこられて」 「状況は?」 「左前足が切れていて、少し出血が多いので気になりますね」 「出血が多いならすぐに止血した方がいいね。すぐ診ようか」 「はい」  コタロウのことに精一杯で、私はふたりの会話を聞き流すことしかできない。とにかく、一刻も早くコタロウを助けてほしい。そんな気持ちでいっぱいだった。
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