1*ネコが繋いでくれたもの

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*ふたつの出逢い*  カーテンの隙間から朝のあたたかな太陽の光が差し込む。外で元気よくさえずっている鳥の声を聞きながら、その心地よさに眠い目をこすり、もう少しだけと私は再び目を閉じた。  今日は土曜日で、仕事は休みだ。私は地元の人たちに親しまれているユズノ薬局で調剤薬局事務として、平日は午前8時から午後5時、土曜日は隔週で午前8時から午後2時という残業免除の形態で働いている。  今年28歳になる私は、3年前から今の生活を始めた。それより前はシステムエンジニアの仕事をしていて、3年経ってもやりがいを見出すことができなかったことに加え、波はあるものの時折やってくる過酷な残業の日々に耐えることができなくなり、今の仕事に転職した。  かなり条件の落ちる仕事への転職だったこともあり、当時は親にも友人にも心配をかけてしまった。不安も大きかったけれど、今ではこの生活に満足しているし、“とある理由”もあって私の選択は正解だったと思っている。  そろそろ起きようと伸びをしながら寝返りを打つと、振り向いた先に毎日一緒に生活している愛猫の姿があった。 「あっ、コタロウ、いたの?」  私の言葉に答えるように、愛猫であるコタロウは小さく鳴いた。  1歳になったばかりのコタロウは、アメリカンショートヘアの母ネコと一部に白い毛のある父ネコを親に持つミックスネコだ。その毛並みは“サバトラ白”と呼ばれるもので、額から背、尻尾にかけて縞模様の入ったグレーの毛、そして鼻先からお腹、足には白い毛を持っている。  飼い主バカと言われるかもしれないけど、短毛ながらもその毛はふわふわしていて触っていて気持ちがよくて癒されるし、丸くて大きい透明感のあるグリーンの瞳がチャームポイントで、その表情は愛くるしい。そんなコタロウを私は出会った頃からずっと溺愛している。  そして、コタロウは私が今の生活に満足している“とある理由”なのだ。
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