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コタロウはお行儀よく前足を揃えて座り、瞳を爛々とさせて私のことを見つめている。その瞳はまるで透明感のある二つの宝石があるかのように、いつも私を魅了してくる。
私は表情を緩め、手をコタロウに伸ばす。
「おはよう、コタ」
首元を軽く撫でてあげると、コタロウは返事をしてくれるようにみゃおと鳴き、尻尾が逆Uの字を描いてゆっくり大きく揺れた。そして、コタロウは立ち上がって私の胸に身体を預けるようにして擦り寄ってくる。
あまりのかわいさにときめいた私は、すぐにコタロウの身体を撫でてあげる。お腹や喉元を撫でているうちに、コタロウはお腹やあずき色の肉球を見せて、気持ち良さそうに喉をゴロゴロと鳴らし始めた。
「コタ~。私が起きるの待ってたの? 遊んでほしかった? ご飯の催促かな?」
私の問いかけに答えが返ってくるわけではないけれど、その行動を見ればどちらかということは一目瞭然だ。コタロウが私を必要としてくれていると思えることが嬉しくて、私はまたコタロウにハマりこんでいく。
そんな私に対して親や友人は「いい年してネコを飼うなんて、結婚する気なんてないでしょ? 本当に仕方のない子ね」とよく呆れたように言ってくる。確かにここ数年ほど浮いた話はひとつもない。
でもコタロウだけいれば十分だと思う気持ちは間違いないものだし、今は出会いがあるとも思えないから、これからもきっとこのまま過ごしていくのだろう。
「そうは言っても、現実の目は厳しいんだよなぁ……」
コタロウを撫でながら思わずため息をついてしまうけれど、すぐに「まぁ、いっか。コタロウと遊ぶの楽しいし」と立ち直ってしまう私はその時点でダメなのかもしれない。とは言え、今の生活に満足しているのは事実だし変えるつもりもないから、今を楽しむだけだ。
「よしっ。コタ、今日も楽しい1日にしようね!」
コタロウをひとしきり撫でた後、私はベッドから起き上がりリビングに向かう。それと同時にコタロウも床に軽やかに降り、尻尾をぴんと立てて私の後を追ってきた。
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