1*ネコが繋いでくれたもの

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 私はいつものようにコタロウが出入りできるくらいの幅にリビングのベランダの窓を開け、部屋の空気を入れ替える。このとき、ベランダに設置しているコタロウの落下防止用のネットがしっかり固定されていることを必ず確認するようにしている。ここはアパートの2階で、下にはクッションになるような植え込みがあるとは言え、落ちると危ないし、外には危険がたくさんだ。  穏やかでマイペースな性格のコタロウは、ベランダでは歩いたり、ひなたぼっこをしたり、おもちゃを抱えて遊んだりする場所だと認識しているようだから心配ないとは思うけれど、いつ何が起こるか予想できないからこまめに気をつけるようにしているのだ。 「じゃあ、ちょっと待っててね」  その言葉を合図に私はコタロウのご飯を用意するためにキッチンへ向かい、コタロウは私にご飯を催促するように何度か鳴いた後、窓際に置いている水が入った容器に向かって飲み始める。それがコタロウがここにきてからの習慣だ。  コタロウのご飯を用意し、今日は天気がよくてあたたかいし昼からベランダのそばでひなたぼっこでもしようと軽い足取りでコタロウが待っている窓際へと向かう。 「コター、ご飯だよ」  呼びかけると、コタロウが嬉しそうに駆け寄ってきて催促するように私を見上げながら鳴く。  いつもの場所にフードの入った陶の容器を置くと、コタロウはゆっくり食べ始めた。そのかわいい姿を少しの間そばで眺めた後、私も朝食にしようとキッチンに向かった。
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