1*ネコが繋いでくれたもの

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 朝食を終えると、片づけや掃除、洗濯を始める。コタロウがうちに来るまでは、特に休日は昼近くまで寝ていることもあったし、こんなふうに規則正しい生活はしていなかった。今ではコタロウとゆったりと過ごす時間を作るために、家事を土曜日の午前中にはできるだけ終わらせるような生活だ。  家事をしている間は、テリトリーである部屋の中をパトロールするコタロウに遭遇したり、掃除機など動くものがあればじゃれつくように邪魔をされたりもする。そんな何気ないコタロウとの生活も楽しくて、以前よりも家事が好きになった。  家事をある程度終え、コタロウがよく遊んでいるリビングの端にあるクッションを見てみると、コタロウの姿はなかった。ベランダに出ているのかなと、私はコタロウを驚かせないようにゆっくり窓を開けてベランダを覗く。 「あ、いたいた」  隣に行けないようにするために置いているオシャレレンガのそばにおもちゃをくわえて遊んでいるコタロウの姿がある。しっぽが大きく揺れていて、遊びに夢中になっているらしい。  遊んでいる姿がかわいくて、私はコタロウの邪魔をしないように、コタロウ用のクッションの隣に自分のクッションを置き、腰を下ろした。 「いい天気だなぁ……」  近くの公園から聞こえる子どもの声や、空を自由に飛び回る鳥たちの声。緑が風に揺れる音。温かい太陽の光。  ときめきも何もない穏やかすぎる日常だけれど、そんな時間もコタロウがいれば楽しいし幸せだと思う。
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