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――趣味もこれといった楽しみもなかった私がコタロウと出会ったのは、1年前の春のことだ。
透き通るような青空が広がる休みの日、大学時代からの友人である璃世(りよ)から連絡が来た。4年前に結婚した彼女はネコを飼っていて、そのネコと知り合いネコとの間に子猫が5匹生まれたから見に来ないかという誘いだった。私は早速、璃世の家を訪れることにした。
子猫たちに初対面したとき、生後20日ほどで、どの子もまだ里親は見つかっていなかった。
「もう、すっごくかわいいでしょ!」
「かわいすぎるよ~! ちっちゃくて、まるでぬいぐるみ!」
あまりのかわいさに、興奮を抑えきれない私は拳を握った手を上下に動かす。もともと犬やネコが好きな私は、目の前で自由気ままに遊び回る、まるでぬいぐるみのようなかわいさの子猫たちに目も心も奪われていた。
私の目に映るネコは全部で5匹だ。貫禄のある1匹はアメリカンショートヘアの美人猫である母猫のマサコちゃんで、大きなあくびをしながらクッションの上に構えている。そして、その周りにいる4匹はマサコちゃんが頑張って産んだ子猫たちだ。
子猫たちの名前はまだついていないという。その中の2匹はお互いにしっぽを追いかけ回して転げまわりながらじゃれあい、また別の1匹はマイペースにぬいぐるみを噛みながら、私のことは気にする様子もなく自由気ままに遊んでいる。
そして、残りの1匹は他の3匹の元気さに反して、母猫のそばから離れようとせず、ひっそりと周りの様子を窺っていた。明らかに元気さのないその子のことが妙に気になってしまって見つめていると、ふと目が合った。子猫はすぐに目を逸らしたけれど、私はその子猫から目を離せずにいた。
目が合った瞬間、まるで私の身体に電気が走るように、運命的なものを感じてしまったのだ。
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