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どうしたらキミは心を許してくれる? どうしたらキミを抱きしめさせてくれる?
今はその答えはわからないけれど、私の心はひとつに決まっていた。
「ねぇ、璃世」
「うん」
「私に頑張らせてくれないかな」
「美夜子?」
「この子と仲よくなれるように努力する。だから、この子を私に譲ってもらえないかな」
「美夜子、本気で言ってるの?」
「うん、本気だよ。動物を飼うのは簡単なことじゃないってわかってるけど、それでもこの子と一緒に過ごしたいの」
突然の私の言葉に璃世は驚いたようだった。まさか私が子猫を引き取りたいと言うとは思っていなかったのだろう。私だってこの子と出会うまでは想像もしていなかった。
「うん、わかった。私もフォローするわ。ネコと一緒に暮らすために必要なことも教えるね」
「璃世、ありがとう……!」
「この子、本当に手強いから、頑張って。美夜子」
「うん」
決心とともに深呼吸をして、私は再び子猫に手を伸ばす。でもやっぱりその瞬間、小さな身体が震えた。怯えられることがこんなにショックなことだと、今まで知らなかった。
お願い。怖がらないで。
無意味に怖がらせないようにと、私は子猫の様子を窺いながらゆっくり近づいた。
でも、この日は結局、子猫は私を受け入れてくれず、触れることもできずじまいだった。璃世の言う通り警戒心が強く、母猫のそばでずっと身体を強張らせたまま動くことはなかった。
もしかしたら触れようと思えば触れることはできたのかもしれない。でも、怯えているのに無理やり触れて、人間に触れられることが恐怖だと感じてほしくなかったし、恐怖は一度ついてしまうとなかなか払拭できないものだろう。
少しずつでもいい。子猫が私に心を許してくれるようになるまで頑張ろう。私はこの日、そう決意した。
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