その2

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間違いない。 ―――何なんだよ、全然、意味分かんない。そんなに地元が好きって……。 ダメだ。バカ過ぎて笑える。 「……あのさ、一つだけ、いい?」 「なんや?」 ボクが遠慮がちに申し出ると、みんなの視線がまた、こちらへ戻ってきた。 「ボク、東京じゃなくて、横浜なんだけどな」 「え……」 その瞬間、全員の目が点になった。 鳩が豆鉄砲を食ったような、心から驚いている顔。 「同じちゃうん? だって、東京都横浜市やんな?」 「神奈川県の横浜市だし」 一斉に黙り込む大阪人たち。 そして、おもむろに照れ隠しのような、薄い笑みを浮かべた。 「なんだよ。東京ちゃうんやったら、早よ言えや。それなら、もっと優しくしたったのに」 「でも、最初に言ったじゃん。僕は横浜から来ましたって」 「ここ大阪やから、そーいう細かい事は分からへんねん」 その場にいた全員が、大きく頷いて同意した。 ―――やっぱり大阪は嫌いだ。 ボクは笑ってしまった。
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