心のグラスにある水は

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 アヤカは溜息をウーロン茶に溶かして飲んだ。浮ついている空間から離脱しきらず、入り込まない位置をキープするために。完全につまらないという態度を取ってしまえば、ノリが悪いだのなんだのと言われて、二度と声をかけてもらえなくなるかもしれない。  どうしてこんなふうにしか、人と付き合えないのだろう。  アヤカは自分の情けなさに、目の奥を揺らした。自分に自信が無いから、こういう態度を取っている。堂々と振る舞う勇気が無いから、誰かと同じ流れの中にいようとしている。  楽しくないわけじゃない。それなりに、楽しいと感じる瞬間もある。大部分が、うんざりする時間なだけで。  アヤカは自分に言い訳をしながら、手の中のウーロン茶のグラスを見た。  グラス一杯の水の量。  アヤカの心のグラスは、空っぽだ。とっくに飲み干してしまって、一滴も残っていない。グラスの水は、どうやって増やせばいいのだろう。どこで汲むことができるのか。 「可も無く不可も無くって、いいよね」  耳元で声がして、アヤカはハッと顔を上げた。グラスから水があふれている状態を書いたタクヒロが、いつの間にか横に座っていた。 「えっと……」  言われた言葉は理解できても、どういう意味なのかがわからない。アヤカはタクヒロから目をそらし、サラダのドレッシングで汚れた小皿に視線を置いた。 「グラスの水。半分」  タクヒロが呟く。     
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