第3章 雨の日

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いつからだろう、晴れの日がだんだんと億劫になってきたのは。 引っ越してすぐ、よちよち歩きの浩介と共に家の周りを散歩したり、少し離れた公園で遊具に乗ったりした時は、青い空も木漏れ日も確かに嬉しく楽しかったのに。 近所のお母さん達と知り合いになって、公園まで行かず家の前で遊ぶようになってから?同じ男の子で同じ年なのに、浩介だけが発育が遅いように感じられてから?母親同士、子供同士をつい比べてしまい、落ち込む自分に気がついたから?斜め向かいの距離と、そこから二件先が果てしなく遠くに思えたから? ……いつからだろう、誰にも会わずにいられる雨の日を待ち望むようになったのは。 雨粒が丸く濁る窓を見上げて、美奈は夫の修一のことを考えていた。 修一は気弱で頼りなくて、浩介と遊びはしても叱るのは美奈まかせな調子がいいところはあるけど、決して亭主関白なタイプではないのに。 断る言い訳に彼を使う度、私はどんどん夫を偏屈でわがままで、理解がない嫌な奴にしてしまう……。 朝一人で見た天気予報の、楠瀬さんの柔らかな声が頭に響く。明日も雨の予報でしょう。 安堵の気持ちと情けなさで、自らの肩を抱きよせながら、美奈は静かに泣いていた。
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