第二十章 贄

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リビングのドアを開けた瞬間…悪夢が再度現実の物となった。 「ぐっ…!!」 社長の呻き声が上がり、私を抱いたまま膝を付いてその場に崩れ落ちた。 私は何が起きたか分からなかった。見上げると社長の額から多量の出血が噴き出していた。 「社長っ!!!」 眼を見開いて声を上げた。ボタボタと社長の鮮血が私に降り注いでいた。 リビングの扉の先には監禁男が立っていた。…手にはむき出しの血染めの金属バットが握られて… 「なに勝手やってんだ?…ぁ?!」 扉を開けた瞬間に起きた凶行に私を抱えていた社長の無防備の額に勢いよく打ち下ろされていた。 目が血走り、鬼の形相の男が次の打ち下ろしに腕を振りかぶっていた。 「ぐぅ…!…ぐっ!…うっ!」 ドン…ドンっと衝撃が私にまで伝わってきた。 床に伏せ、男の追撃を背中を丸め、私を庇い一身に打撃を受け続ける社長。 流血で顔中血で染めた社長が背中に鈍い衝撃を受けながら…私に告げた。 「…舞…逃…げろ…」
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