第7章:愛をするということ

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 就職試験から1ヶ月後、内定の通知がアパートに届いた。  大判の封書を開けて、書類の中にある『内定』という文字をじっと見つめる。これから先、事件や何か不測の事態が起こらない限り、内定が取り消されることはないだろう。 「……お父さんが裏から手を回さなければ、きっと大丈夫なハズなんだ」  俺が小さい頃、休みの日があると自分の膝に乗せて、会社の出来事を面白い物語仕立てで、延々と楽しげに聞かせてくれた。  小さな俺には意味の分からない単語が時々出てきたので、はてなマークを頭に散ばせていたけど、それでも楽しそうに語ってくれるお父さんの姿が見られて、とても嬉しかったという思い出が胸の中に刻まれている。  だからこそ小さいうちから、父さんの会社で働きたいと強く思っていた。  しかしながら大きくなっていくうちに、いろんな方面に興味を持った結果、夢にズレが生じてしまったんだ。  島で働くと言ったときに見せたお父さんの顔が、とても悲しそうに感じたのは気のせいなんかじゃない。そして問題はそれだけじゃなく――。 「……穂高さんはどうして、実家について訊ねてこないのか」    俺が口を割らないと、イジワルなことをしてでも絶対に問いただす彼だからこそ、実家について何も聞いてこないことが、逆に不自然に思えてならなかった。  穂高さんがそれに対してまったく興味を抱かないからなのか、はたまた既に知った事実だから聞く必要がないのか――どっちにしろ、話し合いをしなければいけないのは避けられない。  気の重い話題だけど顔をつき合わせたときにでも、思いきって話をしようと考えた。
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