第7章:愛をするということ

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*** (話し合わなければいけないと思ったのに半年以上の間、何をやっていたんだ俺は……)  農協の内定が決まってからといって生活が一変するワケじゃなかったけど、夏休みや冬休みを利用して島に赴き、バイトと称して職場で仕事をさせてもらったりした。  それ以外の時間があったというのに、穂高さんと顔を突き合わせると、ムダにイチャイチャばかりしちゃって大事な話をせずに、互いの近況報告みたいなものだけで終わってしまい、あっという間に時が過ぎ去ってしまった。  そして年が明けて3月になり、島にある穂高さんの家に荷物を送ってアパートを引き払った。その足で実家に向かうべく、穂高さんの車に付いてるナビに住所を打ち込みながら重たい口を開いてみる。 「あのね、穂高さん。ずっと聞きたかったことがあるんだけど」  案内開始のボタンを押したら、スムーズに車を発進させた。 「なんだい?」  ナビの案内通りに左車線に入ってウインカーを点灯させると、ゆっくり左折しながら訊ねてくれる。ここからは暫く道なりに進むので、話をするのに支障がないハズだ。 「俺の実家のこと。聞きたそうな素振りも見せなかったから、もしかして知っていたりするのかなって」  自分の考えを交えながら告げてみると、チラッと横目で顔を見てから印象的な闇色の瞳を細めた。 「まったく。君には隠し事ができないね。実家については、偶然に知ってしまったという感じかな、義兄さん経由で」 「藤田さん経由で?」 「ん……。あの人、自分に関わりのある人間について徹底的に調べる人だから。仕事で使えそうな人をピックアップして、まとめているらしい。その関係で、千秋の経歴もしっかり調べたらしいよ」
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