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「大丈夫だよ。嫌ったりしないし、言いふらしたりはしないから」
「竜馬くん……」
頭を撫でてる手が途中で止まり、髪の毛を掴む感覚が伝わってくる。
その手を使ってぐいっと頭を引っ張られ、顔が自然と上を向く形になったとき、竜馬くんの顔が音もなく近づいてきた。これって、まるで――。
「好きです、アキさん……」
(逃げられない――)
そう思って身体をぎゅっと硬くした瞬間、目の前がいきなり明るく照らされた。
「わっ、まぶしぃ……」
俺を守るように抱きしめたまま、竜馬くんが振り返って呟く。
「いいトコロ、お邪魔しちゃって悪いね。彼、放してもらえないかな?」
車のライトを照らされたままなので、相手が誰なのかハッキリとした確証はなかったけど、告げられた声は聞き覚えのあるものだった。
「……藤田、さん?」
恐るおそる訊ねるように口を開いたら、ライトを消して白いベンツから出てきてくれる。
「おいおい、何を無防備に対応してんだか……。そこの色男、さっさと千秋から離れなよ!」
苛立ちを含んだ言葉で威嚇するように言い放ち、竜馬くんの肩を掴んで、すぐ傍にある塀に押しつけた。
「ちょっ、一体何ですか、アナタは?」
「俺? 俺はねぇ、千秋の恋人のおにーさんだよ」
「こ、いびと……?」
唐突に告げられたセリフに固まった竜馬くんを、藤田さんは色っぽい表情を浮かべながら見上げ、細長い両腕を首に絡める。
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