第1章:突然の告白

8/12
前へ
/187ページ
次へ
「そうそう。千秋には恋人がいるんだ、諦めなよ。俺が君を慰めてあげる。千秋のようなズブの素人よりも、すっごく気持ちいいコト、いろいろしてあげるよ。ねぇ……」  傍でふたりを見てる俺が、なぜか赤面してしまった。藤田さんの言葉のアクセントのひとつひとつが、どこか扇情的に聞こえてきてドキドキが止まらない。  なのに竜馬くんは表情を一切崩さず、下唇を噛んで藤田さんの腕を振り解くなり、俺に向かい合った。 「アキさん、恋人って赤い車に乗ってるヤツなのかな?」 「…………」  言わなきゃならないよね。友達に男と付き合ってるのを知られた時点で、いつかこんな日がくるかもってどこかで分かっていたハズなのに、躊躇してしまうなんて情けない。  それだけじゃなく、竜馬くんは俺を好きだと言ってくれた。友達としての好きじゃない、恋愛対象としての好き、だよね――でも俺には穂高さんがいるんだ、しっかりと断らないといけない。 「竜馬くんゴメンね、その通りなんだ。その人と付き合ってる。夏休みも彼のところに行ってた。だから」  言い終らない内に、顔を背けて走り去って行く。その後ろ姿を、藤田さんとふたりで眺めた。 「……千秋、話がある。疲れてるトコ悪いけど、車に乗ってくれ」  眉間にシワを寄せたまま身を翻すように車に乗り込む藤田さんを、必死に追いかけた。 (話って一体、何だろうか? 穂高さん絡みのことかな? それとも今の――?)  複雑な心境を抱えたまま助手席に座ると、静かに車を発進させる。  連れられたのは、近所にあるファミレスだった。
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加