雨の放課後

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 よし! と、私が校門へ走り出すと、背後で呼ぶ声がした。振り向くと、帰ったはずの佐藤が私に駆け寄ってきた。紺色の折りたたみ傘を私の頭の上にやりハーハーと息を弾ませている。 「何? どうしたの」  傘を出されて内心私は、嬉しかったのだが、実際は、迷惑そうな声が出ていた。 「部室に置き傘があるのを思い出したからさ、取ってきた」  そう言って佐藤は、傘をさしている方とは違う手に持っている黒いコウモリ傘を私に差し出した。 「これ、返さなくていいからさ、持っていきなよ。うちまで二十分くらいあるだろ」  一呼吸おいて私は、それを受け取った。お父さんの傘みたいでカッコ悪かったが嬉しかった。 「ありがと」 「いーよ、別に」  それから私たちは、なんとなく並んで一緒に帰ることになった。無言だった。私は、沈黙が気まずく、なにか話題をと考えていると、佐藤がぼそっと言った。 「中学の時……ごめん」  私は、ちらっと佐藤の横顔を見た。そうか、一応悪いと思ってはいたのだなと思った。
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