プロローグ 道化師

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プロローグ 道化師

 言わずも知れたことだが現実は夢のように甘くはない。 ***  俺の趣味は読書。つってもライトノベルだが。特に異世界に行って魔法とか剣を使って敵を果敢に倒す感じの典型的なファンタジーのやつが好きだった。  理由?  そんなのつまらない現実からの逃避に決まっている。退屈な授業、学生生活、繰り返される同じような毎日は俺の中でどんなクソなライトノベルよりも劣るものだった。  だから、俺は空ばかり眺めていた。どこまでも果てのない透き通る空の海を。  空を見ていると心底気持ちよかった。同時に自分に翼がない事を思うと飛んでいる鳥を見てはそれを少しだけ羨んだりもした。  翼人種。それはつまらない現実に残されたひとつだけのでっかいロマン。  俺はそんなもの信じていないと周りには言っていたが、太古の昔に翼を持った人間がいることを実は心の中で強く信じていた。  なぜならその人間と俺らの世界を繋ぐ扉があったから。俺の過ごして来た人生でその扉が開いたことは一度も無かったけど。  それでも俺はこの果てなき青空をいつか翼人種のように飛んでやると空想…否、妄想に取り憑かれていた。     
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