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第三 子供になりたいと思った事がある
「懐かしいな…」
子供の頃好きだったアニメのオープニング曲が耳元に流れた。
そういえば子供の頃に自分の将来とはどのように見えていたのだろうかとふと思った。
きっと今現在の自分の姿に成長するなどとは微塵も思っていなかっただろう。
あの頃は明日すら明るく見えていた。
明日は何をしよう。明日はどこへ行こう。
可能性が毎日を輝かせていた。
耳元のアニメのオープニング曲が終わった時気づいた。
「言い訳だ。」
そう。可能性が明日を輝かせていたのでは無い。
自分自身が可能性だったのだ。可能性に満ちていたのだ。
しかし、今はどうだ。
自分の可能性を自分自身で否定し、未来を現状のまま終わらせる事のみ考えている。
「俺の未来は死ぬ事以外無い。」
あの頃に戻れるなら戻りたい。
戻ってもう一度全てをやり直したい。
耳からイヤホンを取り、現実に俺は戻った。
元から現実だが。
子供になりたいと思った事がある。
トイレを出ればまた終わりが始まる。
俺はトイレのドアに手を伸ばした。
が、その時だった。
俺の腕は何者かによって背後から力強く掴まれた。
このトイレには俺一人しかいないはずなのに。
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