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ピペはまず、草を丸く編んだ。内側は薄く、外側を厚く。
それから、裏側を、すべりやすいようにしごいて、ロウ油を塗る。
丈夫そうな灌木の枝を束ねて、長い棒状にする。
両手でかかえられるぐらいの石も用意する。
タマゴの乗っている草の具合を確認して、丸く編んだ草をタマゴの脇に置く。
位置を決めて、大きな石を運び、その石を支点にして、長い棒を、てこにし、タマゴを動かす。少しタマゴが浮いたところに、丸く編んだ草を足で押しやって入れていく。
少し入ったら、位置をずらして、またタマゴを浮かせて、丸く編んだ草を足で押し入れる。
この繰り返し。
大分汗だくになったが、これでタマゴが台座に乗った。しばらく、転がらないように引っぱっていけるだろう。
台座とタマゴにロープをかけ、その反対側を自分の腰のあたりにかけて、ピペは、一生懸命にタマゴを引いた。
「オムレッツー、オムレッツーッ!」
この大きなタマゴを持ち帰り、ほっぺたが落ちそうな、ふわトロのオムレツにする。
そう思って、がんばる。
「オムレッツー、オムレッツーッ!」
草地のはずれから、川に出るところがある。
ピペは、力いっぱい、そちらに向かってタマゴを運んだ。
この川が村に流れ込んでいる川だ。
問題が一つ。
タマゴは、浮いてくれるだろうか?
それを確かめる必要はなかった。
「やっほー、ピペ。すごいデカいタマゴじゃん」
幼なじみのディグが、ボートから手を振っていた。
もう夕方近かったから、村に帰るところなのだろう。
「えへへっ、大漁、大漁。
ディグは、釣り?」
「まあな」
この口ぶりだと、たいして釣れなかったな、と思ったが、そこは追求しない。
だれだって、大漁の日も全然ダメな日もあるのだ。
「先に言っておくけど、これはあたしのタマゴだからね」
「あたり前だろ」
「それじゃ、悪いんだけど、村まで手伝ってくれる?
おひろめの時には、たっぷりご馳走するから」
「オムレツは、ふわトロじゃないと嫌だからな」
「わかった、わかった。飽きるまで食べさせてあげるから」
「ベリージャムもつけろよ」
「わかった、わかった」
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