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「いいからとりあえず起きてくれ、美空。緊急事態だ」
「ふぇ…?」
真剣な陸斗の言葉に、美空はぐしぐしと目を擦り、
「……あれ?ここどこ?」
ようやっと開いた目で周囲を見渡し、こくりと首を傾げた。
……現在三人が居るのは、見渡す限り真っ白な、何もない空間だった。
横を見ても、上を見ても、下を見ても、全て白。三人以外、徹底して色のない空間。
美空と同じように周囲を見回し、海里も困惑の声を上げる。
「…そういえば。…俺たちさっきまで…」
「ああ。さっきまで俺たちは通学路に居た。こんなところに来た記憶はない」
陸斗が頷いて、指先で眼鏡をくっと上げる。
そう、先程まで、三人は間違いなく通学路を歩いていたのだ。それはいつもと変わらない光景で、何の異常もなかったはず。少なくとも、こんな奇妙な場所へ来てしまうようなことはなかったはずだ。
「えぇ、僕まだ寝てるのかなぁ…うみちゃん、ちょっとほっぺ貸してぇ」
「俺のほっぺ引っ張ろうとすんな…ああでも、感覚ははっきりしてるし、夢じゃねェんじゃねェの」
「夢じゃないにしたら…恐らく、ここへ来る直前…俺たちの身に何かが起こったと考えるのが妥当だろうな」
三人でううん、と頭を抱える。
すると、
『…その通りだよ。なかなか冷静な推理だね』
「「「!?」」」
唐突に、真っ白な空間の何処からか、三人以外の誰かの声が響いた。
三人が驚いて周囲を見回すと、空間の一部がぐにゃりと揺らぎ、その波紋の中から二人の人間が現れた。
一人はプラチナブロンドの髪に中性的な顔立ち、もう一人は金髪の男性。二人とも、古代ローマ人が着ていそうなデザインの白い服に身を包んでいる。
プラチナブロンドの髪の…恐らく男性は、ぽかんとして自分たちを凝視している三人を見回し、にこりと微笑んだ。
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