0.その話、ノってやるよ

3/9
前へ
/47ページ
次へ
「いいからとりあえず起きてくれ、美空。緊急事態だ」 「ふぇ…?」 真剣な陸斗の言葉に、美空はぐしぐしと目を擦り、 「……あれ?ここどこ?」 ようやっと開いた目で周囲を見渡し、こくりと首を傾げた。 ……現在三人が居るのは、見渡す限り真っ白な、何もない空間だった。 横を見ても、上を見ても、下を見ても、全て白。三人以外、徹底して色のない空間。 美空と同じように周囲を見回し、海里も困惑の声を上げる。 「…そういえば。…俺たちさっきまで…」 「ああ。さっきまで俺たちは通学路に居た。こんなところに来た記憶はない」 陸斗が頷いて、指先で眼鏡をくっと上げる。 そう、先程まで、三人は間違いなく通学路を歩いていたのだ。それはいつもと変わらない光景で、何の異常もなかったはず。少なくとも、こんな奇妙な場所へ来てしまうようなことはなかったはずだ。 「えぇ、僕まだ寝てるのかなぁ…うみちゃん、ちょっとほっぺ貸してぇ」 「俺のほっぺ引っ張ろうとすんな…ああでも、感覚ははっきりしてるし、夢じゃねェんじゃねェの」 「夢じゃないにしたら…恐らく、ここへ来る直前…俺たちの身に何かが起こったと考えるのが妥当だろうな」 三人でううん、と頭を抱える。 すると、 『…その通りだよ。なかなか冷静な推理だね』 「「「!?」」」 唐突に、真っ白な空間の何処からか、三人以外の誰かの声が響いた。 三人が驚いて周囲を見回すと、空間の一部がぐにゃりと揺らぎ、その波紋の中から二人の人間が現れた。 一人はプラチナブロンドの髪に中性的な顔立ち、もう一人は金髪の男性。二人とも、古代ローマ人が着ていそうなデザインの白い服に身を包んでいる。 プラチナブロンドの髪の…恐らく男性は、ぽかんとして自分たちを凝視している三人を見回し、にこりと微笑んだ。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加