0.その話、ノってやるよ

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話を振られたグレンが一歩前に出る。 『少し長くなってしまうが…出来るだけ掻い摘んで話そう。まず…パツィと俺は、お前たちが生きていた世界の他にもう一つ、別の世界を管理している。お前たちが言うところの、剣と魔法のファンタジー世界…〝べーテン〟という世界だ。遥か昔、べーテンには〝魔王〟と呼ばれる者が居て、世界中の全てを手に入れようとしていた。それを食い止めたのが、〝勇者〟と〝空の賢者〟〝海の賢者〟〝地の賢者〟だ。四人は魔王の根城へ突入し、激闘の末何とか魔王を封印することに成功した。魔王の封印には〝英雄〟〝空〟〝海〟〝地〟の四つの鍵が掛けられ、現在も魔王を封じ込めている…』 「…その英雄譚と俺たちと、何の関係が?」 前置き通り長い説明に痺れを切らした海里が口を挟む。 グレンは宥めるように右手を挙げ、先を続ける。 『まぁ、聞け。で、だ。その鍵なんだが…五百年が過ぎたあたりから、その力がじわじわとだが弱まっていることが確認されてな。〝英雄の鍵〟はまぁ…何ともないんだが、問題が〝空〟〝海〟〝地〟の三つの鍵だ。この鍵は魔法とは違う、ある別の力で掛けられていて、その力の持ち主は三人の賢者だった。その力は継承する資格のある者が受け継ぐことになっていたが…最後の賢者がこの世を去った後は継承者がおらず、次代の賢者は不在のまま、鍵の力は弱まりながら九百九十五年の年月が流れた』 「何故継承者が居なかったんです?」 『この力の継承の主な条件は、〝魔力の器がないこと〟〝魔法が使えないこと〟〝純粋な魂の持ち主であること〟…他にもあるが、絶対条件はこの三つだ。べーテンでは魔力の器は皆生まれつき持っているし、魔力の器があれば大なり小なり魔法は使えるから、条件が一致する人間は今まで現れなかった。お前たちの世界から探すことも検討したが…そもそもべーテンに適応できる人間が居なかった』 「成程…それで?…何となく、言いたいことはわかってきましたが」 『察しが良いのは助かるな。そして今、漸く賢者の力を継承できる器を持ち、べーテンに適応できる人間が見つかった……もうわかっていると思うが、それがお前たち三人だったんだ』
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