15.Echo

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ふと私の中で何かが引っ掛かる。 会話を巻き戻してみると、 光正が何気なく呟いた >うん、好きだったな という言葉だったと気づき、 なぜ引っ掛かったのかを 酔ってボンヤリした頭で考えてみる。 …ああ、そうか。 …過去形なんだ。 当たり前と言えば 当たり前なのかもしれない。 転職してまで追い掛けて。 一旦は交際するまで辿り着き、 その気にさせておきながら 最後には他の男が好きだと一方的に 別れを告げた女。 職場では相手の男との円満な夫婦生活を 思いきり見せつけられ。 その男が死んだら今度は 都合よく近寄って来て、 何も無かったかのように平気な顔で 一緒に食事したりして。 時には恋敵だった男にソックリな その娘を世話してくれと頼まれ、 それを文句も言わずに受け入れている。 本当に私は、 鬼のように酷い女だ。 頭の中では分かっているのに、 どうしても甘える相手が欲しかったのだ。 事情を知っていて、 ただ一緒にいてくれる優しい相手が。
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