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ふと私の中で何かが引っ掛かる。
会話を巻き戻してみると、
光正が何気なく呟いた
>うん、好きだったな
という言葉だったと気づき、
なぜ引っ掛かったのかを
酔ってボンヤリした頭で考えてみる。
…ああ、そうか。
…過去形なんだ。
当たり前と言えば
当たり前なのかもしれない。
転職してまで追い掛けて。
一旦は交際するまで辿り着き、
その気にさせておきながら
最後には他の男が好きだと一方的に
別れを告げた女。
職場では相手の男との円満な夫婦生活を
思いきり見せつけられ。
その男が死んだら今度は
都合よく近寄って来て、
何も無かったかのように平気な顔で
一緒に食事したりして。
時には恋敵だった男にソックリな
その娘を世話してくれと頼まれ、
それを文句も言わずに受け入れている。
本当に私は、
鬼のように酷い女だ。
頭の中では分かっているのに、
どうしても甘える相手が欲しかったのだ。
事情を知っていて、
ただ一緒にいてくれる優しい相手が。
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