15.Echo

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「なかなか雅さんもヤリますね」 「…えっ、何のこと?」 話しながらも『中へどうぞ』と 手振りで示すと森嶋くんは後ろ向きで 靴を脱ぎ、リビングへと入って行く。 「なんだ、言ってくださいよ~。 営業部の番匠さんかあ。 旦那さんが亡くなって、3年でしたっけ。 もう次の男がいてもイイ時期ですよね~」 「うわ、違う違う違う、誤解しないでよ」 慌てて私は弁解する。 芳が亡くなり、 経済面で不安になった私が 引越しを検討していたところ、 光正がここを薦めてくれたのだ。 会社へ乗継ぎ無しの電車1本で行けて、 しかも近所には小学校やスーパー、 病院なども揃っている。 既に光正が別階に住んでいたので 周囲の目など色々と懸念されたが、 それ以上に家賃の安さが魅力的だった。 「だから番匠さんとは付き合っていない。 単なるご近所さんなだけだから、 おかしな噂は流さないで」 「でも俺、知ってますよ。 昔、番匠さんと死んだ旦那さんとで 雅さんのことを奪い合ってたって。 …別にいいじゃないですか、 不倫じゃあるまいし。付き合っちゃえば」 カタンと物音がして 光正が戻って来たかと思うと そのままL字型ソファの端に腰を下ろし、 柔らかく微笑みながらこう言った。 「森嶋くんはまだ若いなあ。 …人の感情はね、 そんなに上手く割り切れないんだよ」 その言葉は、 軽いようで深く深く私の心に沈んだ。
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