15.Echo

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若さは無敵だ。 傷ついてもすぐに回復するから、 自分以外も同様だと思い込み、 平気で他者を傷つけてしまう。 年齢を重ねるごとに 人は傷つかない方法を身に着け、 深く関わり合うことを避けるようになり。 どんどん人間関係が希薄になるのだ。 だからこそ、 10代や20代で仲良くなった友人は 一生モノのような気がする。 それは、自分の無様な姿を 思いっきり見られているからで、 今更隠すことなど何も無いからだ。 なのに森嶋くんには、 友人らしき人物がいないのだと言う。 イマドキの若者と言ってしまえば それでお終いだが、 本音を晒して語り合う相手がいないのは、 あまりにも寂しいではないか。 「余計なお世話ですよ」 「うん、でも感情を吐き出すことは 人間にとってとても重要なことだと思う」 明日は土曜で仕事も無いので、 唯を寝かしつけた光正が戻って来てから 3人で酒盛りを始めた。 元々お酒に弱い私は すぐに説教臭くなってしまい、 ひたすら熱く森嶋くんに向かって語り。 要所要所で光正が彼を助ける。 どうしてこんなにムキになって 森嶋くんに関わろうとしてしまうのか。 自分でもよく分からない事態に 戸惑っていると、 光正が驚くほど呆気なく答えをくれた。
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