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「…ああ、そうか。
どことなく森嶋くんって
井崎君に似ているんだな」
酔って頭の中が程好く麻痺していた私は
その言葉で腑に落ちてしまう。
「顔のパーツとかが似ているのかな?
でも性格が全然違うからさ、
それでなかなか気付けなかったんだ」
死んだ元夫に似ていると言われても、
あまり気分は良くないのだろう。
森嶋くんは分かり易く
顔を顰めている。
「どんな人だったんですか、
雅さんの亡くなったご主人って」
どうせ私に訊いても
答えてくれないと思ったのか、
その顔は光正の方に向いていて。
何故か気まずい思いを抱えながら、
私は押し黙っていた。
「うーん、ひと言で表現すると、
強かったなあ。
10代で死を意識して、
それでも人と接することを止めなかった。
物凄く社交的でね。
彼の周りにはいつも笑顔が溢れていたし、
自然と周囲に人が集まってしまうような
そんな魅力的な男だったよ」
それを聞き、森嶋くんはボソリと呟く。
「なんか、外見は似てても
中身は真逆ですね。
俺なんて孤立しまくってるし。
むしろ嫌われる天才っつうか…」
あ、自覚してるんだ。
などと冷たいことを思いながら、
私はひたすらジッと森嶋くんを見つめた。
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