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場を盛り下げたことが気まずかったのか、
森嶋くんはいきなり話題を変える。
「あ、そう言えば娘さんって7歳でしょ。
小学生になってもまだ絵本とか読むんだ」
これに光正が答える。
「声をね、聞かせると落ち着くみたいで。
毎日一緒にいた父親が突然消えただろ?
それで幼いながらも不安になるみたいだ」
「ふ…うん。そういうモンですか」
「本人に訊いたワケじゃないけどね。
俺がそうだったから」
「番匠さんが?」
「俺も小さい頃に母親を亡くしてて。
暫くの間、不安定だったんだよ」
「あ…えと…なんか、すいません」
…そうか、森嶋くんは相手のことを考え、
勝手に自滅してしまうタイプなんだな。
強気なように見えて、
実はとても弱い人なのかもしれない。
「謝ること無いよ。
全然、気にしてないから」
ここで何がきっかけになったかは
まったくもって不明だが、
森嶋くんのメソメソスイッチが
突然ONになったようだ。
「俺、なんか人付き合いとか苦手で。
その…面白いことも言えないし、
気の利いたこととか出来ないし、
当たり前のことがハードル高くて…。
だったら1人の方が気楽だし、
誰とも打ち解けずに生きるのも
アリかな…なんてそう思ってたんです」
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