15.Echo

13/20
前へ
/20ページ
次へ
場を盛り下げたことが気まずかったのか、 森嶋くんはいきなり話題を変える。 「あ、そう言えば娘さんって7歳でしょ。 小学生になってもまだ絵本とか読むんだ」 これに光正が答える。 「声をね、聞かせると落ち着くみたいで。 毎日一緒にいた父親が突然消えただろ? それで幼いながらも不安になるみたいだ」 「ふ…うん。そういうモンですか」 「本人に訊いたワケじゃないけどね。 俺がそうだったから」 「番匠さんが?」 「俺も小さい頃に母親を亡くしてて。 暫くの間、不安定だったんだよ」 「あ…えと…なんか、すいません」 …そうか、森嶋くんは相手のことを考え、 勝手に自滅してしまうタイプなんだな。 強気なように見えて、 実はとても弱い人なのかもしれない。 「謝ること無いよ。 全然、気にしてないから」 ここで何がきっかけになったかは まったくもって不明だが、 森嶋くんのメソメソスイッチが 突然ONになったようだ。 「俺、なんか人付き合いとか苦手で。 その…面白いことも言えないし、 気の利いたこととか出来ないし、 当たり前のことがハードル高くて…。 だったら1人の方が気楽だし、 誰とも打ち解けずに生きるのも アリかな…なんてそう思ってたんです」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

444人が本棚に入れています
本棚に追加