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もともと素直なのか
それとも酔っているせいかは不明だが、
私達に自分のことを教えてくれる気に
なったらしい。
一生懸命に語るその姿が、
なんだか妙に可愛く見える。
思わず口元を綻ばせていると、
光正が相槌を打った。
「俺もそうだったんだよ。
大学くらいまでは本当に内向的で、
いつでも1人で過ごしていた。
人と関わり合って神経をすり減らすより
1人でいる自由を選んだんだ。
もう、死ぬまで1人かもと思ったのに、
それをぶち壊した女がいてさ」
「女?」
無言で微笑みながら、光正は私を指さす。
「雅さんですか!」
「うん、そう。
あれは衝撃だったなあ。
初対面で説教されちゃってさ。
なんというか物凄い吸引力だった」
恥ずかしさの余りに両手で耳を塞ぐが、
それでも微かに会話は聞こえてくる。
「説教って…。ぷぷっ。
そんな昔からこのキャラだったんですか」
「そうだよ、雅は変わらないんだ。
いつまで経ってもこの調子。
なんかもう、当時はクセになっちゃって。
ひょっとしてマゾっ気あったのかも、俺」
「へええ。
その頃から既に好きだったんですか?
…雅さんのこと」
「うん、好きだったな」
「ですよねえ。
死んだ旦那さんと奪い合うほどだし」
「奪い合ってはいないよ」
「へ?そうなんですか??」
「最初から勝負は見えていたんだ。
雅はずっとずっと井崎君のことが好きで、
それは死んだ今でも変わらないからさ」
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