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人事部の簡易応接室を後にし、
私は重い足取りでオフィスへと戻る。
残念ながら森嶋くんは離席中で、
代わりに営業部の女性社員が数名いた。
たぶん、商品についてのリサーチの為に
誰かが来るようにと依頼したのだろう。
もしかしてそのまま歓送迎会にも
参加するよう誘ったのかもしれない。
残念ながら商品開発室には、
圧倒的に若い女性社員が少ないのだ。
もちろん、その原因は森嶋くんで。
次から次へと若いコに手をつけるせいで
退職しても新人は補充されず、
他部署の中堅が異動してくるようになり。
若い女性層の意見が欲しい時に、
わざわざこうして営業部の女性陣を
借りることになってしまったのである。
…うん。
確かに今迄プライベートなことだからと
見て見ぬ振りをしてきたけど、
よく考えると業務にも支障が出ているな。
祐奈の言う通り、上司である私が
ガツンと注意すべきなのかもしれない。
そんなことを考えていたら、
営業部の女子たちが試食用のお菓子を
つまみながら雑談する声が聞こえてきた。
「番匠さん、今日もカッコ良かったねえ」
「でも今年で38歳だってよ」
「私、全然あれならイケる!」
…相変わらず、光正はモテモテだな。
「でも今日さ、用事が有るからって
物凄い勢いで帰って行ったよね」
「そりゃあ、オンナじゃない?
いないワケないよ、あの人に」
「ええっ?じゃあ梨乃は??
付合うかもとか言ってたじゃん、あのコ」
梨乃というのは
この春、営業部に中途入社して来た
石原さんのことだろう。
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