15.Echo

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驚くべきは、その手際の良さだ。 一緒に並んで歩いていたはずなのに、 いつの間にかさり気なく背後から 手を回されていて。 そうとは意識していないうちに、 路地裏へと誘導されており。 気付けば自販機の陰に隠れ、 向かい合わせで立っていて。 軽い笑みを口元に浮かべたかと思うと、 次の瞬間、唇が触れていた。 こんなのパニックになって当然だ。 あまりにも久しぶり過ぎるその行為に なぜか芳の姿が脳裏に浮かび、 それでようやく冷静になった。 …ああ、こんなにも違うんだ。 心のこもったキスと、 そうじゃないキスはこんなにも違う。 >雅、本当に愛してるよ。 >どうかどうか、幸せに…。 芳、やっぱり私は 貴方のキスじゃないと反応しないよ。 芳、逢いたい。 逢っていろいろ話したいのに。 でもそれは叶わないことなんだよね。 まるで条件反射のように 涙がボロボロと零れてくる。 何年経っても変わらない。 私が芳を想う気持ちは、 一向に薄れる気配が無いようだ。 「…なんで泣いてるんですか?」 「森嶋くんになんか教えない。 っていうかさ、意味不明なんだけど」 「意味不明?」 「そうよ、なんで私にキスしたの?」
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