15.Echo

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その表情は驚くほど変化せず。 業務報告をしてくる時と まったく同じ口調で森嶋くんは答えた。 「『2人きりで話がしたい』ってのは、 てっきりそういう意味かと思ったんです」 「そ、そういう…意味??」 「雅さん、旦那さんが亡くなって もう3年も経つでしょ? そろそろ人肌恋しい時期なのかなと」 「ふざけてんの?」 「いや、真剣ですけど」 「絶対にふざけてるよね?」 「でも、3年も男ナシでいるのって、 尋常じゃないです」 「それは森嶋くんの固定観念だよね?」 「いや、一般論ですけど」 「随分と狭い『一般』ね」 …段々と虚しくなって来た。 なんだろう、この手応えの無さは。 何を言っても相手の心には届かず、 返ってくる言葉も私の心には響かない。 この人、毎回こんな感じで 女のコと付き合ってるの?? 「これじゃあ、誰とも長続きしないわ」 思わず口から零れたその言葉に、 初めて感情のこもった答えが返ってきた。 「余計なお世話ですよ。 そんなの他人にとやかく言われたくない」 「でも、人事部の方から苦情が来てるの。 森嶋くんが若い女性社員を食い散らかす のを何とか止めてくださいってさ」 「俺だけの責任じゃなくて、 向こうが勝手に言い寄ってくるんです。 こっちは断るのが面倒で 適当に相手をするだけだ」 「うーん、あのさ、森嶋くん。 貴方も26歳になるんだし、 青臭い言い訳はそろそろ通用しないわよ」
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