15.Echo

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明らかにムッとした表情で 森嶋くんは私に言った。 「…こっちだって困ってるんです。 会社前で勝手に待ち伏せされたり、 行きつけの店で待機してることもあるし、 どこからか電話番号を調べて掛けてくる。 ネクタイだの手作り弁当だの 欲しくも無いのに強引にプレゼントされ、 しかもその見返りを求められるんですよ。 俺が彼女を作らないのは、 そこまで本気になれる女がいないからだ。 でも、そのせいで狙われるんです。 取り敢えず適当にあしらっておけば 暫くの間は平穏を保てる。 俺だって犠牲者だと思うんですけど、 違いますか?!」 …ふと、誰かを思い出した。 そっか、そうだ、光正だ。 あの人も若い頃はモテまくっていて、 いつでも困った顔をしていたっけ。 世の中には 必死でモテようとする人間もいれば、 こうして本人の意思とは関係無く モテまくってしまう人間もいる。 …顔かなあ?? …顔だよねえ。 ちょっと翳のある男って 若い女のコの大好物だし。 しかも女にだらしないという噂を聞けば、 『もしかして自分でもイケるかも』とか 勘違いしちゃうよねえ。 私は何となく森嶋くんを 光正に会わせたくなり。 歓送迎会の後、 早速それを実行するのである。
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