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帰って来ると店先にランドセルを背負った子供が植木の柵に登ってなかをのぞいてる。
時計を見ると、十時を回ってる。こんな時間に、何やってんだ?客に親でもいるのか?
裏口から入った。
「早かったですね」
「まあな」
マスターお帰り、という客たちに挨拶しながら、ちらちらと窓の外を見ながら、店の中を見渡す、いつもの顔ぶれ、まあ俺の知っている人ばっかりでもないが。隆一に聞く。
「外に子供がいるけど知ってるか?」
「子供ですか?」
目があった、指を指した。
外に行く隆一、子供は顔をひっこめた。
「どうしたの?あ、まって?いっちゃいました」
「マスターの隠し子か?」
なんて言われたけど、そんなことはない、どう見ても小学校五、六年生だろう。
「高校の時にやっちゃったことか?」
そんなことはない。
「あら、童貞君、バラしちゃったー」
客たちに言いように言われる、まあ隆一が来てからそっち関係が増えたから仕方がないけどな。
大きな事件が起きたと世間が騒ぐ。
またか・・・
一年に一度、必ずと言っていいほど報道される、子供の虐待。
だがこれは氷山の一角でしかない。
子どもの虐待は、子供の死をもって世間に知られることとなり、死ぬこともない子供たちは、今だ、母親に嫌われまいと手を伸ばし。父親の世話をおさないながらにしなければいけないとけなげな小さな手を広げている。
なぜ、そうなるのか。
そいつらは、犯罪者となってやっと思い知る。
ああ、人を殺したのだと・・・
でもその多くは、自分の子供を殺したという自覚はない。
なぜなら、虐待をする者たちは、人ではない、この世の一番小さい虫にも劣る。
快楽だけを望む雄と雌。それ以外の何物でもないから、子供を産む覚悟なんかなく、ただ産み落とした物でしかないから。
子供は文字を覚え、謝ることで必死に訴えていた、お母さん殺さないでと・・・
「つらいねー」
「つらいです、俺なんかどんなに頑張ったって」
「はい、はい、男は無理よね」
「そんなー」
客の話は黙って聞いてやる、この時間はめんどくさい、なじみの客が多いから。
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