1、茶店の駄目男(だ・めんず)マスター

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スーツに着替え、夜の街へ 「キラ、今から?」 「おう、来てねー」 街を歩いているだけで声を掛けられる。 店にはまだネオンががんがんに光り輝いてる。ここは俺の狩りの場所、女は金で俺たちを買いに来るんだもんな、喫茶店なんかやってられっか、こっちの方が稼ぎはいいんだ。 ここだけは季節、関係ねーよな。 源氏名はキラ 鏡張りの廊下、俺っていけてるよな自分に浸りながら、金色のポールの付いた扉を開けるとにぎやかな音が外に鳴り響きだした。 俺の方を一斉に見る人たち、女たちは俺に手を振り、猫なで声で誘ってくる。 黒服が俺の方に向かって走り出してきた。 「おはようございます、すみません、バックへ」 小さな声で俺のジャケットをクンと引っ張った。 「なんかあったのか?」 「とにかく来てください」 と、扉を開けた先、事務所に入る。 「オーナー、来られました」 大きなテーブルに向かい、下を向いていた男性が顔を上げた。その前にはさっき来ていた子供。 「お前?」 「あら知ってるの?」 ソファから見上げるようにこっちを見た。へーかわいい男の子だな。 俺の店の前にいた子だよな? 「この子がこんな物もってきたの」 大きな机の前にあるソファに座る子供を見ながら、オーナーの脇に立つと、手を伸ばした。手紙? 「中見させてもらったわ、どうもあんたのおやじさんの事みたいね」 手紙の表書き 児島信行様、おやじの名前・・・ 裏を見た。 再婚することになりました、この子はあなたの子です。よろしくお願いします。 加奈子 そしてもう一枚渡された写真?顔を摺り寄せ笑っている、確かにオヤジとこの子だ。 「可奈子?誰だよ、お前、名前は」 「…咲」 「お前、女か?」 頷いた。 坊主ではないにしても丸刈りって。 「苗字は?」 「…」 「咲ちゃん、黙ってても調べればわかるのよ」 「田中咲」 警察 「無理でしょうね」 と言うオーナーに聞いた。 「何でですか?」 「だって、俺を訪ねるようにメモを持たせてあるじゃない」 ウソだろ、マジかよ。
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