1、茶店の駄目男(だ・めんず)マスター

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「なあ、オヤジと最後にあったのいつだ?」 泣き出した。こっちだって泣きたいよ。 「失礼します、キラ、指名」 オーナーは 「行ってこい」と言う。 「お願いします」 と言って、店に出た。 「今日は厄日だ、厄払いして~」 女の客に縋り付いただけでうけた。 いっぱいお金を使ってもらった。 時計はもう今日になっていた。 事務所で寝ている子をおんぶして帰り、寝かせ、俺も寝た。 目覚ましが鳴った。 「ん?なんのにおいだ?」 目覚ましを止め、部屋から出ると鼻歌を歌いながらキッチンにいる女の子、ガス代の前にいすを置きその上に載っているのが見えた。 見た目男の子、ランドセルも、あ?黒?え?女だよな? 「へー、オムライス?」 後ろからのぞくと俺を見上げた、ガタンと椅子から落ちそうになるのを支えた。びっくりして俺を見る子。 「お、オムレツ」 「俺も食う、作っておいて」 風呂に行って、出てきた、食べずに待っている子。 俺が座ると 「いただきます」 と手を合わせた。 俺も手を合わせた。 おやじはいつもそうしていた。形もいい、盛り付けもうまいな。一口、ん?美味い、おやじの味? スプーンを咥えながら、俺を見ている。 「なんだよ」 目線が俺の後ろを見ている。 振り返った。 「おやじの写真か」 「変な写真」 「死んだから急いで探し出した写真」 「死んだ?」 「病気で死んだ、もうこの世にはいない」 スプーンが落ちた。 「知らなかったのか?」 頷いた。 「さっさと食え、学校行くぞ」 とランドセルを背負わせ外へ出た。
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