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1、茶店の駄目男(だ・めんず)マスター
この世に生れ落ちるとき
神様はどんな風にしてこの人の元へこの子を送られるのだろう。
子供は、親も、その生まれた環境も、選べるわけではない、ただ遺伝子レベルで生まれ落ちた者たちは、どこで、何をしようとも、生きるすべを失っているわけではない。
すべての生命は、その瞬間、この大気を体いっぱいに吸い込み。
その歓喜を泣くことで表す。
だが産み落とした者たちは、安どの表情を浮かべ、次の瞬間その子を抱き思う。
この子の行く末は……
幸せか
不幸か
いや、裕福か、貧困か
願うことは、ただ、生きてほしいと
幸せに生きてほしいと
そう思ってくれる母であってほしい。
そう思ってくれる父であってほしい。
「いらっしゃいませ」
カランカランとドアが開くときれいな音色が響いた。
目に青葉か、でも俺の心はどんより早くも梅雨空。とはいえ、まだ四月だっていうのに、外は汗ばむくらいで桜なんかとうの昔に咲き終わった。
笑顔で接客なんかしてられるか。客は嫌そうな顔をして、ブレンドと言ってテーブル席に座った。水を出し。
「お待ちください」
と言う。
又客が入ってきた。
いつも来る女子高生二人と男子一人が俺の前に座った。
「いらっしゃい」
「無愛想」
「もっと笑えばいいのにー」
「それ出来ないよね、きゃはは」
と言って笑われた。
こいつらも仲がいいよな。こいつはどっちの子の恋人なんだ?
いつも思う。
ただ、いまはそんなこと考えたくもない。
なぜなら
一時間前、俺は失恋した。
「すべてがうまくいく人生なんて聞いたことがない」だからー、仕事すりゃいいんだろ?
「人生は勝利。何事にも勝たないと何の意味もないの。だから努力するんでしょ!」
女はそう言うと金をたたきつけて
「さよなら、お金は空からは降ってこないの、死ね!」
「死ねはねえだろう」
「さようなら、追いかけてこないでよね」
そう言い残して出ていきやがった。
努力。
はー、なんにもしたくない。
黙っていても三食の飯が出てきて、好きなことを一日して。
掃除も洗濯もだれかがしてくれる、夜は好きな時???ができればいい。そんな生活・・・期待してた俺がばかだった。
期待か―、あいつは結婚の二文字に期待したのか。
楽して―な
あるじゃん
そっか、犯罪者、刑務所に入ればいいんだ。
でもな、我慢するのがな。
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