白い子ども部屋と黒い子ども部屋

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 ともあれ、つい最近までの教育のトレンドというものは、ホワイトボックス教育法または、ブラックボックス教育法のどちらかを選択することにより、子どもたちが驚異的な集中力や忍耐力を手に入れられることを期待するのが、世界的に主流となっておりました。 さらに我が国は、生まれ出てくる子どもたちすべてをホワイトボックス教育法かブラックボックス教育法のどちらかで育てなければならないという法律が、世界で初めて施行(しこう)された国でもあります。 それが十八年前の話であり、そういう私も、ちょうど十八年前にこの世に生み落とされるのと同時に、黒の部屋へと連れてこられ、ブラックボックス教育法のとおりに育てられたのでした。 そして十八年前から、多くのこの国の子どもたちは、十八歳になり成人になるまで、ホワイトボックス教育法を選択したものは白い部屋で育てられ、白い服をまとい、白の学校へと通い、白いランドセルを背負い、白いえんぴつを握りしめ、ホワイトボードに書かれた(あわ)く白い字を眺めて成長していき、逆にブラックボックス教育法を採用したものは黒い部屋で生活し、黒尽くめの服を着て、黒の学校へ登校し、黒いスクールバッグを掛け、黒い消しゴムを使い、黒板に描かれた濃い黒の図をなんとか識別して、精一杯生きてきたのです。
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