私の置かれた特殊な教育環境

2/6
前へ
/29ページ
次へ
 私も普通の子どもと同じように生きていれば(そもそも、その状態を普通と呼んでよければの話ですが)、 そのまま黒の部屋で十八歳の誕生日を迎えるまで過ごすことになっていたでしょう。 しかしながら、私はその“普通”の子どもたちとはまったく異なる人生を歩むことになってしまいました。 私の両親は私の育て方について、ある特殊な方法を採用しそのデータを収集させることを国の教育研究機関と契約してしまったとのことです。 そのある特殊な教育方法というのは、一年ごとにホワイトボックス教育法、ブラックボックス教育法を交互に(ほどこ)すというやり方でした。 つまり私は、はじめに置かれたオセロの駒のように、何度も何度も、黒から白、白から黒とその面をひっくり返されていったのでした。 黒い部屋で五歳の誕生日を迎えた私は、白い部屋に置かれた真っ白なバースデーケーキ目がけてかけ出したと、そういうふうに記憶しています。 六歳の誕生日には逆に、白い部屋から黒く染まった部屋に入り、バースデープレゼントの箱を開けたのです。その箱の中身は黒いうさぎのぬいぐるみでした。 image=510644673.jpg
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加