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クソぉ、動け、動け、俺の身体!
!?今、ほんの少しだけど小指が動いた。
『寛子!寛子!!
見てくれ!今小指が動いたんだ。
俺は生きてる!俺は動けるんだ』
左手は布団の中じゃ誰にも見えない。
「おはよ。ねぇあなた起きて。
大事な話があるの」
『起きてるよ』
「今日で3ヶ月。
あなたは知らないだろうけど、あなたの治療は今日で終わりなんだって」
『知ってるよ』
「これからはあなたが自分で目を覚ますまで待ってるだけなんだって」
『・・見てくれよ俺の左手!
小指、動いたんだ。俺は生きてるんだ』
「ねぇあなた、いつ目を覚ますの?
ほんとに目を覚ますの・・・・
ねぇ!ねぇ!
お願い、返事をしてよ!」
『気付いてくれよ!俺は生きてる
俺は・・・』
「あなたはいつだってそう。
私が何を聞いてもそうやってうなずきもしない!
タダシはね、あなたの治療費を払う為に大学を諦めるって言ってるのよ!
あなたが死ぬまで生命保険も降りないの!
・・・・」
『・・・・!?』
「ごめんなさい。私、もう・・・」
『寛子、俺・・・』
「ごめんなさい、あなた。
あたし・・・」
俺は何をやってるんだろう。
俺が生きてる事で二人を苦しめている。
一刻も早く動けるようになって・・・・
動けるようになって?
動けるようになってどうなるんだ?
すぐに働ける訳じゃないだろう。
リハビリをして働けるようになるのはいつだ?
半年、一年か?
もしかしたら一生誰かの手を煩わせる事になるのかも知れない。
それを寛子やタダシに強いるのか?
俺は生きていていいのか?
考えるのをやめよう。
今は動けるようなる事だけ考えるんだ。
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