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「くそっ! 謝ればいいんだよな?
すぅ……すみませんでした」
不本意そうではあるが、男が謝った事で気を良くした貴子は、ベルトを離してにんまりと笑った。
―――ざまあみろ。少し位イケメンだからってなんでもかんでも許されないのよ。初めからさー、謝ればいいのよ。謝れば。
貴子は見知らぬ男に頭を下げさせた事で、ずいぶんと晴れやかな気分になっていた。
男の後姿をしたり顔で見送ってから、貴子はスマホの時計を確認した。
―――あ、いけない。私もこうしていられない。大事な商談があるんだったわ。
貴子は急いでホームを走っていった。
人の波と一緒に流されながら貴子は、男が頭を下げた時の悔しげな表情を思い出して一人で含み笑いをもらした。
―――それにしても、黙ってたら相当いい男だったけどね。もったいないわ~。
改札を通り抜けながら呑気にもそんな事を考えていた。
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