第二段階 キスという行為

8/11
前へ
/38ページ
次へ
「そんな事言うんだ? へえ、やっぱり冷たいですね」 ジョッキを逆さにして上下に振る貴子。 「冷たいだと? な、なんでそうなるんだ?」 「だって、そうでしょう? お姉さん、お替り下さい。生ジョッキで」 貴子は、どよんと座りきった目で白井を見てくる。 「朝だって、自分だけ私の吊り革を掴んでおいて。手ごとよ。手ごと!」 自分の手をひらひらと動かして白井の目の前にチラつかせる貴子。 「なのに、私がよろけて仕方なーく……仕方なーくよ? 掴んだネクタイがーたまたま自分のだったからって。 怒って仕事に私情を挟んでくるなんざあ、ひどい仕打ちよ」 店員がジョッキを運んできて貴子の前に置く。     
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

153人が本棚に入れています
本棚に追加