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「そんな事言うんだ? へえ、やっぱり冷たいですね」
ジョッキを逆さにして上下に振る貴子。
「冷たいだと? な、なんでそうなるんだ?」
「だって、そうでしょう? お姉さん、お替り下さい。生ジョッキで」
貴子は、どよんと座りきった目で白井を見てくる。
「朝だって、自分だけ私の吊り革を掴んでおいて。手ごとよ。手ごと!」
自分の手をひらひらと動かして白井の目の前にチラつかせる貴子。
「なのに、私がよろけて仕方なーく……仕方なーくよ? 掴んだネクタイがーたまたま自分のだったからって。
怒って仕事に私情を挟んでくるなんざあ、ひどい仕打ちよ」
店員がジョッキを運んできて貴子の前に置く。
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