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第三段階 片思いというプロセス
「藤谷、吐くのか? 歩けないのかよ」
―――なんだって、こいつは白井となんか飲んでんだ?
尾田は、しゃがみこむ貴子の背中を擦った。
「なんだ。尾田か」
「なんだじゃねえよ。お前、頼むから邪魔しないでくれよ」
「邪魔? なんでよ」
尾田に支えられながら、歩く貴子。
「お前の言う通りにさあ、段取り踏むつもりで彼女に昨日の事は謝って、さっきまで会ってたのに」
ぶつぶつ言う尾田。
「どうせ、うまく行ってないでしよ?」
「いってたさ、ちゃんとよお、手から繋いだんだから」
鼻息荒くして尾田が言う。
「へえ、やってみて」
「あ?」
貴子がふらつきながら、手を尾田に向けて差し出した。
「ほらほら!」
貴子にせかされて尾田は、貴子の手を握った。
「あー、尾田」
手を握ると貴子がケタケタッって笑った。
「な、なんだよ」
「不自然なんだけど、この握り方! ははっ笑える」
貴子は、繋いでいる手を持ち上げて
「こうやってぇ……」
尾田の指と指の間に自分の指をからめた。
「ザ、恋人つなぎーーー。ってやったの?」
繋いだ手をぶんぶんと振りながらご機嫌な貴子。
―――何が恋人つなぎだよ。人の気も知らないで。
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