第三段階 片思いというプロセス

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尾田は、楽しそうに『おてて~つないで~』と鼻歌を歌っている貴子を見つめた。 「繋いだに決まってんだろ。俺を誰だと思ってやがるんだ?」 「尾田」 「だろ? 俺は、やる時はやるからな。それで~手を繋いだ後は~~」 尾田が貴子の背中へ手をやり、ぐっと自分の方へ引き寄せて貴子の顔に自分の顔を近づけた。 驚いたように尾田を見上げる貴子が瞬きを数回した。 「こうやって~近づいて~」 「ストップ!」 貴子は、酔いが覚めた様に目を大きく見開いた。 「尾田! 野獣! やめてよね。実験台にすんの」 「手を繋ぐのは良くて、キスは駄目なのかよ」 諦めたように尾田が貴子から顔を遠ざけた。 「当たり前。尾田と私は、同じ穴のムジナ。違うか。とにかく、相方とキスはしません!」 貴子は、今だにふらつく足取りではあったが、一人で立ちながら両手を交差させて『バツ』の形を作った。 「漫才師だったら相方とキスする人もいるぞ」 「え? ああ、あれは夫婦漫才の人じゃん。あれは、ほら夫婦だからいいの!」 「ふーん。……あおっておいてキスは無しなのかよ」 「ん? なんか言った? 尾田」 ふらふら歩く貴子の隣へ行くと、また体を支える尾田。 貴子が横へ来て黙っている尾田の鼻先を指でつついた。 「ったく、尾田は黙ってたらイケメンなのにねー」     
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