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「まあな。お前も黙ってたらいい女なのにな」
「んーーー? なんか言った? 尾田」
「言ってねえ。一言も」
―――一言も言わないって決めてる。こいつの相方になってから、仕事が楽しくて仕方ない。
だから、この関係は壊さない。そう決めてる。
「早く帰るぞ。冷えてきた」
尾田は、半ばラグビーボールみたいに貴子を小脇にかかえて早足で歩き出す。
「尾田!」
「今度はなんだよ」
「走れ~~~」
人差し指を前に出して命令を下す人のように偉そうな貴子。
「ったく。じゃあ、走るぞ」
冬の夜。
冷たい風もなんのその。
―――こいつは、軽いな。ちゃんと食ってんだか心配になる位だな。
貴子を抱えて走る体格のいい尾田。
まるで、その辺で拾ってきた酔った女を無理に抱えてお持ち帰りする男って風にも見えなくもなかった。
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