第五段階 嫉妬というプロセス②

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「いえ! まさか。そんな事夢にも思いません。ただのご親切なんだってわかってます」 慌てふためく貴子は、両手をバタバタと動かした。 しばしの沈黙のあと 「藤谷さんが誤解されていなければ私は結構です。……では、これで」 笑顔で店を出て行く白井を見送る貴子と尾田。 ―――くそっ、むかつくな! あのでかい男! なんだって。俺がキャバクラに通う親父呼ばわりされなきゃならないんだ。俺が何をした? あの女にコートを買ってやっただけだろ。 そこまで、考えて白井は思わず立ち止まった。 ―――俺は、何故あの女にコートを買ってやるなんて言い出したんだろう。思い出したぞ。あのデカイ男が『俺が払う』って言い出したからだ。だからって、何故だ。俺が買ってやるなんて言い出さなけりゃならない理由は、どこにも見当たらないぞ。 白井は頭を大きく横へ振ってから、再び歩き始めた。
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